伝統工芸:仙台箪笥
現在の宮城県において、みやぎ伝統的工芸品の指定を受けている19種類の工芸品の中の一つである
仙台箪笥は、その歴史を
江戸末期にまで古く遡ることが出来ます。
もともと、武士が刀や鞘、かみしもなどの衣装をしまうために作られたものが原型であるために、横幅は4尺、高さは3尺3寸の大きさに作られていました。1尺はおよそ30cm、1寸はおよそ3cmですから、横幅約120cm、高さ約100cmのどっしりとした趣きのある箪笥です。
主に箪笥の素材として使われているのは、宮城県の
県木であり、大きく育った街中の並木道としても有名な
けやきの木です。
それを木地呂塗りで仕上げることによって、けやきの木目の美しさをいっそう際立たせて生かし、最後にさまざまな文様の手打ち金具をその装飾としてたくさん使い、場合によっては何百とつけることもあるために、非常に
重厚感とともに
堅牢感もたっぷり感じられるのです。
仙台箪笥は、作り上げる過程において一つ一つ、指物、漆塗り、金具を扱うそれぞれの優れた職人の技によって支えられている工芸品ですから、二つとして同じものが無いと言っても過言ではありません。
また、このように木目の美しさとそれを生かす漆塗りの手法、更には鍵穴や引手といった手打ち金具の素晴らしさは、他に類を見ません。
宮城県では仙台周辺の旧家の女性が
嫁入り道具の一つとして、嫁ぎ先に仙台箪笥を持参してきたことにより普及した背景があり、それが代々受け継がれて今日に至っているのです。